「秘伝書」というと、フィクションや剣豪物語の中のイメージですが、社寺建築ではこの「秘伝書」が今も、実際の建築に活かされています。
それが、
匠明(しょうめい)の秘伝書です。
日本の伝統建築は、木造技巧の粋であります。
その木造のマニュアルと言うべき物が、「木割り(きわり)」です。
その木割りを体系化し、完備した日本最古と呼ばれる木割り書が、1608年に平内正信(へいのうち まさのぶ)によりまとめられた全5巻からなる「匠明(しょうめい)」です。
平内正信は安土桃山時代の紀伊国(和歌山県)の大工一族です。「匠明」はその後、平内一族の秘伝書となり、江戸幕府大棟梁の系譜につながっていきます。
木割りとは
※国立国会図書館デジタルコレクション「大工木割秘伝書」よりの抜粋
木割りとは、木造建築において建物の寸法を、各部材の「比例」で表した物で、たとえば「柱の太さ」を基準にした場合、その他の部材の寸法や間隔をどういった割合にすべきか決めた物です。
その木割りの秘伝書は、元は一族師弟の門外不出のものでありましたが、近代化と共に印刷・出版されるようになり、広く知れ渡り、今日の社寺建築の継承に大きく貢献しました。
木割り自体は奈良時代から存在したともされていますが、匠明で総括的に纏められるまでは、断片的な木割り書や、師弟間での口伝で継承でした。
それが「匠明」により木割りが詳細に体系化され、細部の微妙なバランスや「型」が目に見える形になり、後の世の大工にとって文字通り「教科書」となりました。
建築の近代化がすすんだ、現在の社寺建築においても、
「 匠明の秘伝書 」の情報は設計士や大工にとって変わらず使われ続けています。
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