カナメの社寺建築の特長の一つでもある
「チタン瓦」。
これはチタンの板を瓦型にプレス成型したものです。
なぜチタンか?
当社は、社寺建築において、重い瓦屋根を銅板に葺き替える工事を多く手掛けてきました。
銅板よりも耐候性の高いものをと考えたのが、チタン屋根開発を始めた経緯でした。
以前から、いぶし瓦のような色への要望があり、チタンであればそれに近い色合いが出せるのでは…と考えたのです。
カナメが開発を本格的に始めたのは2001年頃のことでした。
新素材のチタン
チタンと聞くと、なんとなく新素材のように感じますが
実は、チタンは、1970年代から建材分野で利用されてきました。
古くから用いられている鉄や銅・金などの金属と比べると
50年ほど前からなので、金属素材の中では新しい金属となります。
耐候性が高いため、沿岸地域には最適です。
橋梁で海に浸かる部分やビルの外装などに利用されています。
広く知られる建築ですと
東京ビッグサイト、お台場のフジテレビ球体部分などはチタン建材の代表例です。
当社でも、1990年代から
屋根でチタン材を活用していました。
ただ、当時はチタンの板を現場で手加工しながら施工していました。
そのため、複雑な形状は不可能で、
一文字葺き(横葺き)のような意匠しかできませんでした。
▲初期のカナメのチタン屋根。シンプルな一文字葺きの形状です。
手強いチタン
チタンは非常に硬く、職人泣かせの素材です。
銅板であれば、折り紙を折るように折ったり曲げたりできるのですが
チタンは折ろうとしても、戻ってしまう力(スプリングバック)が強くて
折り曲げが難しい。
現場加工でハサミを入れようとも、硬いためなかなか切れない。
道具も傷むし、手も痛むし…という非常に扱いづらい素材なのです。
そこで、現場成型を極限まで最小化するために
チタン成型瓦を開発し始めたのです。
▲チタン材を成型するプレス機
チタンを瓦型に成型する
もちろん、そんな癖のあるチタンですから
開発も容易ではありませんでした。
もともと銅板用の金型で、チタン材をプレスしただけでは出来ません。
無理に力を入れると亀裂が入ってしまいました。
▲亀裂が入ってしまったチタン瓦
最終的には「折り紙で作れるような形状」をめざし、
形状の改良と金型の改善を何度も行い、テストし、
素材メーカーの協力もあって、チタン瓦が完成しました。
私たちに身近な製品で使われているものは
めがねフレームやゴルフクラブ、アレルギーを引き起こさない特長もあるのでピアスやネックレス、時計などのアクセサリーにも使われますね。
住まいの中では
屋根以外にも、外壁や内装壁面材、手すりや換気扇フードなどにも使われます。
耐用年数は、半永久的と言われますので、
どうしても初期費用だけで比べると、瓦や銅板よりも
割高に感じますが、メンテナンスや耐用年数の事を考慮したランニングコストで見ると
経済的と言えるでしょう。
御寺院様は、何百年とこれから先の未来へと
歴史がさらに語り継がれていきます。
未来を見据えてみてはいかがでしょうか。