寺院門の種類
古代の寺院では門と言えば、
南門・南大門を指しましたが、鎌倉寺時代以降に寺院に「山号」が付けられることが一般的になると、
寺院の表門を総称して「山門」と呼ばれるようになりました。
さらに、門の建築様式や役割の多様化により、寺院の門には名称が生まれました。
今回は代表的な門の名称と違いをご紹介いたします。
四脚門 八脚門 薬医門 棟門 唐門 楼門 二重門 鐘楼門 冠木門
四脚門(しきゃくもん・よつあしもん)
一見すると柱(脚)が6本あるように見えますが、2本の門柱(本柱)とは「別に」前後に控柱(ひかえばしら)が計4本あることから「四脚門」と呼ばれます。
門柱には円柱、
控柱には角柱が使われます。
八脚門(はっきゃくもん・やつあしもん)
門戸の左右にそれぞれ一間ずつ追加され、三間で門柱(本柱)が4本ある門です。4本の門柱の前後に控柱(ひかえばしら)が計8本あることから「八脚門」と呼ばれます。
追加された間(ま)には仁王像が安置されるのが一般的ですが、
「仁王門」と呼ばれる門でも建築様式は八脚門から楼門まで多様です。
薬医門(やくいもん)
門柱(本柱)の後ろに控柱が2本設けられた門の総称です。
社寺だけではなく城郭や邸宅にも多く使われた門です。
名前の由来には、
医院において、門扉の隣に出入りが簡単な戸を設け、患者の出入りを楽にした医院の門という説もありますが、その他にも諸説あげられています。
三間造りで格式をあげた門もあります。
棟門(むねもん)
(むなもん・むなかど・むねかど)とも呼ばれます。
2本の門柱(本柱)に切妻屋根を設けている門です。
邸宅でも広く使われていますが、門を支える柱が少ないため多くの場合では塀と連結させて設置されます。
唐門(からもん)
唐破風を設けている門の総称です。
向唐門(むかいからもん)
門屋根の側面に妻を持ち、唐破風が正面を向いている門です。(上記の2写真)「向こう唐門」とも呼ばれます。
平唐門(ひらからもん)
門屋根の両側面に唐破風がある門です。
楼門(ろうもん)
2階建ての門で、一階部分に屋根(下屋)を持たない門の総称です。2階部分には高欄が配置されている物が一般的です。
「楼」という文字は、「高く構えた2階建ての建物」意味です。言葉の意味をご存知の方にはそのままの名称の門ですが、現在は楼という言葉を使う機会がほとんどありませんので、初めて聞いたという方も少なくないのではないでしょうか。
二重門(にじゅうもん)
2階建ての門で、一階部分にも屋根(下屋)をもつ門の総称です。
鐘楼門(しょうろうもん)
(しゅろうもん)とも呼ばれます。
門の上に鐘楼堂を設けた門の総称です。階下の形状は楼門造りから、袴腰造りなど、いくつかの様式があります。
冠木門(かぶきもん)
門柱に屋根がなく、冠木(笠木かさぎ)を通している門の総称です。
今ですと日常より、時代劇の関所などのシーンで見る機会が多いかもしれませんね。
上記以外にも、櫓門(やぐらもん)、長屋門(ながやもん)、高麗門(こうらいもん)などがあり、さらに各建築様式が融合した門など、様々な名称の門が存在します。
今日では、寺院の取り巻く環境、寺院を利用される人々の社会様式の変化に合わせ、「門」の種類も変化・融合もしております。
それでも、門の形態に大きな意味がある事、歴史的な背景がある事、
そして、そこに人々の「想い」があることはこれからも不変であり続けていくことでしょう。
我々、社寺建築に従事させて頂く者も、不変の「理念」を大切に、皆様の想いを守る技・知識を磨いていく所存でございます。
一覧に戻る